刊本・自筆稿本等

六々園漫録 第一巻

本居大平翁の狂歌

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2102226(同上)

○本居大平翁の狂歌
野かひのうし二つかきたるゑに歌こひたるに
万葉集の二字一言のかなに五十をい(□)牛鳴
をも(□)とよませたるかあるをおもひよせて
角文字は五つを十のよみにして
もゝは二ツの牛のこゑこゑ
 からすうりのゑに
うすけれとかもうりハまつあをかるを
なとくろからぬからすうりそも

*歌意 「五十」と書いて「い」(二字一音)と読ませ、「牛鳴」と書いて「も」と読ませるというのならば「角文字(牛の角に似ているところから「い」、)は五つを十(よせた)五十を「い」と読み、「もも」は牛の鳴く声二つ分になる。なぞなぞのような歌。
*かもうり 冬瓜の一種。歌意 色はうすいけれどもカモウリ(冬瓜)は青いものであるのに、どうして少しも黒くないカラスウリというのだろうか。
*本居大平は和歌の先生であるが、俳諧歌(狂歌)にも興味を持っていた証となる歌である。

紀伊ノ国和歌山のくすし太記のもとへつかはしたるせうそこ

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2102226(同上)

○紀伊ノ国和歌山のくすし太記のもとへ

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2102227

つかはしたるせうそこ
たかのゝ山のたかき御名ハはやう和哥浦わの田隺か
ねよりも尚たかうきゝわたり侍りていとしたハしうもな
つかしうもおもひ給へ侍りつるをゆくりなうおとろかい
給へるうれしさげにたもとせはくこそさるハあづまのま
らうと雅雄かこゝろもておのれか月ことのまうけ題を
しも見せたてまつりぬるをあなしれやともかいやら
せも給ハて御みつからかすかすの御歌をしもよませ
給ひておくりたまハセたるなんいともいともおふけなく
かしこに(く?)ハおほえ侍るなるいてや鳥なき里のかは

ほりとかやいへるやうに此わたりの人々のよめるをこそハひか
こゝろのまゝに点あへなとものしはへるなれいかてかゝ
る玉こかねのよしあしをハわいため侍るへきたゝいたゝ
きにさゝげもちておのれらがほんにもこそとやがて御ふ
んじはなたんとし侍りつるをあやにくにかのまらうどが
見とゝめていなそハはやうおのれかこひえしなれハ
ぬしにはえ見せじとてあなかちにうはひてとりかく
しもてゆきけるそいともいともせんすべなきそハいつれ
の巻にくハへはへるともおのつからなる玉の光りハそこら
かゝやきわたりてけちえんにあらハれはへるへけれと高

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2102228

山は螻蟻なとの眼のおよふへきにあらす大うミハ
海老ざこなどのはかりしるへきにあらされハさる価
なきたから夜光る玉をしもなほかゝるひが目には
え見出すて命婦のおとどにこがねあたへ翁丸にぜ
にとらせたらんやうにや侍らましといとど爪くひつべき
こゝちのし侍るまゝにまだかの歌巻のなり出さるほとに
まづ此かしこまりきこえおきはへるになんかへすかへすう
ひまなひのひかことハ常のならひにて侍れはさる
かたもおほしゆるしたまへかしあなかしこ抜足
   泥田坊の君の御もとに

   おなし人のもとよりかへしのせうそこ
うれしうもおもひ給へらるゝかなをりからの霜むすふ
草のいほりをとひくる人めもかれてさうさうしきに
村雲のたちへたゝる船路尋ていその浪うちきこえ
させ給ふ御かへりことつはらにうけ給ハり侍りぬまことや
大人の高き御名ハ世の人ののゝしり給ふにきゝ侍り
てしたハしうもなつかしうもあハれさるへきついてもか
なせうそこ奉りてんと思ひ給へられなからわたつミの
そこの見るめも物むつかしとたにおほし給ふらんとおもひ
たゆたひて心くるしくもきこえならさりしにゆくり

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2102229

なく雅雄のぬしの驚かせ給ひて大人の月なミのまう
け題をしもおくり給ハりしかハかゝるをりこそありかた
けれとうれしさに心も乱れ侍りてすゝろなるよミ歌
とも俄にものし侍りしことになんけにかゝる御まうけ
にはこまつるきわれとおもハん人々の言葉の錦たち
もおくれしとよミ出給ふことになんあめるそかなかへ
厚こえたる古いわんほうの??なとまじへたらんにハ
かのみちのか??ならて狗あハしとや見給ふらむ。
こは例のこゝろなしのかゝるっわさをしてこよなき罪
うることよとくやしくもくちをしくも思ひ給へられ

なからさりしのちハいかゝハせんそか品ハもか下にこそ
定めらるへきなれハましいまさりおとりなとハかけ
てもあけつらふへきわさならぬをまめまめしき御
こゝろにそかえらひに?れなんことをしもうしろ
めたくおもほしつゝかの巻のなり出さるさきにとて
命婦のこかね翁丸の?といふたとしへもてすかし
こしらへいひおこせ給ハりたるハいともいともかたしけなき
仰ことなるをそをおのかひかこゝろにうしのかれに
かことし給ふヘ?うるさくも蜂ふきぬへき歌そとは
見ぬ間にさしもしりにけんかしとも思ひ給へらるゝに

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2102230

(中略)
           あなかしこ太記
   六々園大人の御もとへ

*おほけなく おほけなし 身分不相応である。身の程をわきまえない。(旺古)
*泥田坊の君 胴肝太記のこと。
*おなじ人 同じく胴肝太記をさす。
○胴肝太記との仲も春足さん宅逗留中の雅雄がとりもったようである。二人とも文体はいわゆる雅文体の典型。くだくだしく何を言っているのかさっぱり容量を得ない。

苅菰ノ知麻伎か萬匂集の中人さするかくすしとなれる長歌

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2102230(同上)

○苅菰ノ知麻伎か萬匂マニホフ集の中人さする按摩
すしとなれる長歌

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2102231

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