六々漫談

『雅言集覧』(石川雅望著)と遠藤春足の関係

抜六 今日は石川雅望著の『雅言集覧』と春足さんの関係について見ていきましょう。

遠藤 はい、私も関心があります。雅望からの書簡を見ていると「雅言集覧」の文字がしょっちゅう出てきますからね。

抜六 そうなんです。雅望は雅言集覧の進行具合について春足さんに逐一報告しています。今回はその中から雅望が本居大平に序文を書いてもらったいきさつについて関係深いところを取り上げましょう。

分類月日差出人内容
2-2-2文化8年(*)11月1日石川雅望雅言集覧を出版予定 古語の用例を抜き書き
2-5-1文化12年?6月12日石川雅望雅言集覧の校合に専念
2-8-1文化12年?10月13日石川雅望やる気を失う
2-8-2文化13年?5月17日石川雅望再び専念
2-12-2文化13年?6月29日石川雅望雅雄の遠藤家逗留
2-12-3文化13年?10月12日石川雅望雅言集覧序文本居大平へ依頼の件を頼む
2-14-2文化14年?1月4日石川雅望雅言集覧校合すり送付
2-13-4文化14年?2月5日石川雅望雅言集覧すりたて送付 大平の序文催促
2-13-3文化14年?4月18日本居清島雅言集覧の序文引き受け
2-14-3文化14年6月7日石川雅望大平の序文受取
*粕谷宏紀著『石川雅望研究』P.207より

雅言集覧を出版予定 古語の用例を抜き書き

2-2-2 石川雅望書簡 文化8年11月1日付け

『雅言集覧』と申す物、出し申すべくと存じ候。これは多年見るに随ひ諸書より同語をぬき出し置き候。文章かきならひ候人のために、益もこれ有るべきや。此の節、これを校正いたし罷り在り候。

抜六 この文章をみると雅望は後に『雅言集覧』として出板されるものを既に準備していたことがわかりますね。

遠藤 『雅言集覧』という書名も既に使われていますし、いまこれを校正しているともあります。もう原稿はできあがっているのでしょうか?

抜六 それについては要注意です。「これは多年見るに随ひ諸書より同語をぬき出し置き候」とあるので、雅望が長年読書してきた中で出てきた言葉、例えば「さぶらふ」のような言葉がどのように使われているか、その用例を抜き書きしておいたということでしょう。

遠藤 えぇ…、それはすごく骨の折れる作業ですね。雅望といえば狂歌師のイメージが強くて、狂歌師といえばインスピレーション重視の人たちだと勝手に思っていましたが、雅望に関していえば学者のような側面も持ち合わせていたんですね。

抜六 雅望は大変頭のいい人だったようですね。その抜き書きが大分たまったので、それをイロハ順に並べ校正しながら原稿に整理しているということのようです。

遠藤 なるほど。書簡の続きには「文章かきならひ候人のために、益もこれあり候や」とありますが、これは「文章を書く人にとって役立つこともあろう」ということでしょうか。

抜六 そういう意味ですね。

遠藤 ということは、この雅言集覧という本は、いまでいう「古語辞典」とか「用例集」のようなものですね。

抜六 そのとおりです。ネット情報によりますと、この本はいまでも古語辞典とか国語辞典を編纂する時に参考になるそうですよ。

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