山早春
梓弓はる立にけり妻こもる
矢野の神山霞たなひく 正根
功ならす身もまたいまたしりそかす
なはかりとけて何のやくなし 蜀山
夏昼
かなまりにいれしけつりひとくもてこ
此日さかりのあつさけ?てむ 諸平
藤袴
ふちはかまたれわかれにしおもかけの
さらにわりなくかにゝほひつゝ 広海
語注・気付き
4-6-1 梓弓はる立にけり妻こもる/矢野の神山霞たなひく
*妻隠る 矢野の神山 露霜に にほひそめたり 散巻惜しも 柿本人麻呂 万葉集巻10-2178
*「矢野の神山」を徳島市国府町と名西郡石井町の境にある気延山(きのべやま)とする説があるが根拠はない。
*作者「正根」がどういう人か、不明。
4-6-2 功ならす身もまたいまたしりそかす/なはかりとけて何のやくなし
○蜀山人仕官の前半は代々の御徒組(七十石五人扶持)の下積みであった。それに引き換え今日歌人、文人としての名前はつとに有名であった。「なはかりとけて」は「名前ばかり遂げて(名声ばかり揚がって)」の意味。
4-6-3 かなまりにいれしけつりひとくもてこ/此日さかりのあつさけ?てむ
○「あてなるもの・・・・削り氷にあまづら入れてあたらしきかなまりに入れたる」(清少納言「枕草紙」)
*とくもてこ 「疾(と)く持って来(こ)」(早く持って来い)
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