一筆致啓上候厳寒之節ニ
御座候処御揃愈御壮栄可被成
御起居奉賀候次ニ拙家無事居申候
乍慮外御休意可被下候然は十月
廿八日之御状霜月中旬相届忝
致拝読候さて雅言集覧はし
めのかた上木出来ニ付此度壱部
御贈下深く忝永蔵いたし可申候
先日則六樹園よりも右上木分
壱部此書品川玄槻へ向ケおくり
くれられ申事ニ御座候右一部は
厚志人へゆつり可申候さて又江戸
の事故板ほり上りも至極よろしく
出来大慶いたし申候右集覧の
序興詩季鷹文の事御申越
さつと一覧いたし申候へ共いまた深く
すミすミ迄目も通さぬ位ニ而(?)御座候
さるは多用故也◯老父当春
上京日記の事右も無寸暇いてき
不申候此度は格別めつらしき事も
有之ましくと奉存候されと出来候ハゝ
御めにかけ可申候すへて著述物
上木物大延引かちニ而(?)こまり入り居申候
当秋尓来公私雅事甚多用
相勤可申候故諸方詠草もとかく
行とゝきかたく自己の学事ハ
一向おくれかちニ而)?)はかゆき不申候
此方も近比は哥はやりニ而(?)長歌会
もをりをり御座候御めにかけ度候へ共
書記ニいとまなく候先右御返事
?如此御座候猶期後音候已上
本居左衛次
清島
十二月三日
遠藤宇治右衛門様
尚々此度は老父ゟ書状之上不申候
六樹園へも御序ニ宜敷可被申候已上
語注・気付き
*右集覧の序興詩季鷹文の事 雅言集覧序文は(本居)大平・(源)興詩・(賀茂)季鷹が書いている。なお大平序文では春足が仲介したことにも触れている。(国立国文学研究資料館デジタルアーカイブ「雅言集覧」参照)
○情報①十月二十八日(日附)(春足)書簡到着、拝読。②「雅言集覧」はじめの方一部恵贈、ありがたい。③先日六樹園よりも上木分一部送られてきた。一部は厚志人に譲るつもり。④江戸の摺りものはできが至極よい。⑥右「雅言集覧」の興詩・季鷹文はまだ隅々までは見ていない・⑦老父(大平)当春上京日記は多忙に付まだできていない。格別めずらしいことも無かったが出来次第お送りする。⑧当秋以来極めて多忙に付方々への返書も書く暇が無く自分の学業も怠りがちで困っている。等。
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