秋冷少し相催し候処愈御安勝
可被成御座候奉喜賀候拙家無事
居申候乍慮外御放念被下候
一五月二十三日之御状六月十五日
相達し辱拝見致候御頼ニ付
先達而おくり申候雅言集覧
之序文御落手被下候由候
一契仲東麻呂短冊一軸
一故翁染筆類別く
右御目書之通慥ニ入手致候
落字(?)補狂文真偽見定め
の儀御頼承知致し候物故翁の
染筆物は近年来諸方ゟ
あまた見せに来り再ゝこまり
申事也そハをりにハ真物と
見え候物御座候へとも十ニ八九ハ
偽筆もの多く其内にハいかにとも
真偽見定めかたき??品も
有之なとかたく以文あるひハ
そへ哥等頼来り多用中
甚わつらはしく存候処近比ハ
のかれらるゝたけハ断申遣事
ニ御座候
一貴君御作のかけん集覧序文
拝見加除返上申候御落手可被下候
右盆時分に拝見相済ひかへも
筆工ニうつさせ差出し申さんと
取したゝめて飛脚へ出し?ニ
致居候処此度当月二日
御状至来未貴地へ相届不申
由御座候へハ早々吟味いろく諸国
向巻の?々の箱なとさかし申候
処取残し有之うちおとろき
いかゝ成事と存今日早々飛脚へ
出し申儀ニ御座候右ハつくり事
ならす実ニありのまゝ申候
一江戸石川氏ゟ書状御届
被下慥ニ入手致申候同人へおくり申候
先達而之序文の事丁寧
によろこひ申こされ入御意候
事ニ御座候先は序に貴方
よりよろしく御申し達し可被下候
右如此御座候 以上
本居三四右衛門
同 左衛次
八月十三日
遠藤宇治右衛門様
語注・気付き
*三四右衛門 本居大平の事
*左衛次 本居清島の通称
○読み取れる情報①頼まれていた雅言集覧(大平の)の序文(春足に)届いた由②(春足から鑑定のため)送られてきた、契仲・東麻呂の短冊一軸、故翁染筆類、落字補狂文(?)鑑定承知した ③近年故翁(本居宣長)の染筆と称する物(十中八、九は偽筆)の鑑定を方々から頼まれ、迷惑している。たいていはお断りしている (書簡1-2-1に同じような内容の書簡あり。参照)④(春足が書いた)雅言集覧序文拝見。添削の上返上(したはずだったが、)⑥(春足から催促の書状が来たので)よくよく探してみると諸方への書状に取り紛れ残っていたので急いで飛脚便で差し出した。これは嘘ではない。(このあたりのいいわけ誠に苦しそう)⑥江戸石川雅望から丁寧な礼状をもらった。(春足さんからも)よろしく伝えて欲しい。(石川雅望が春足の仲介で本居大平の序文をもらったいきさつについては粕谷『石川雅望研究』p239,242等参照。最終的にもらうことには成功したがそれまでのいきさつについてはすったもんだの紆余曲折があったようだ。)
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