摺りもの

遠藤春足著『白痴物語』・石川雅望序文

撮影:四国大学 / 分類:手鑑3-10-3

此しれものゝ物語は阿波國なる
遠藤春足ぬしのなりはひのい
とまことにかきつゝりたるものとなん
さるハいミしきすき人にてもろこ
しとなくやまとゝなくなにくれの書
とものこるくまなくとりあつめみわ
たし給ひつるうへ本性のさとくかし
こくおはすれはさえのほとすかすか
とのほりゆきてはやう世にたくひな
きはかせたつ人となり給ひぬお
のれちさとをへたてゝすまひぬれと
此ぬしのみやひこゝろのことなるを
ふかくしたふまゝにかたみに文とり
かはしつゝうるはしうむつひかハしつ
一日かゝる書おくりおこせてけるを
まきかへしよみ見るにけに此比の

撮影:四国大学 / 分類:手鑑3-10-3

人の筆つかひにも似すあてにおか
しく見ところありてまたたくひ
あらしはやとおほえつきてなん
たゝにすくしかたくてこのはしつ
かたをかいよこすもやさしき人の
かたへにハはちかゝやかしきこゝちの
するや
         六樹園のあるし
             石川雅望

語注・気付き

*はちかゝやかしきこゝち 「恥かがやかく」 恥じて顔を赤くする(旺古)
*この文章を早稲田大学図書館蔵書(デジタルアーカイブ)と照合したところ次の箇所を除いて同文、同刻。(この箇所以外筆跡は全く同じなので同じ版木を使い、この部分だけ改訂を施し版行したものと思われる。)
本文2行目~3行目
「のなりはひのいとまことにかきつゝり」(遠藤家蔵)
「わらハとものこへるまゝにかきてあたへ」(早稲田本)

○『白痴物語』の刊行は鈴木馨「略年譜」によると文政十一年冬となっているが早稲田大学図書館のラベルによると文政八年となっている。次の五山漢文序では「乙酉夏」となっており、乙酉は文政では八年にあたるから、文政十一年というのは鈴木の誤記、もしくは異本と思われる。(当サイトの春足関連年表では、文政八年に白痴物語刊行としております)

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