九月十日之貴書本月十一日
到着拝誦いたし候寒気之節
御万福大慶仕候御連中
御詠草被遣一覧奉返上候
扨々御上手の御方々御座候而
驚入候事ニ御座候御社中ゟ
方金二片
貴君より
方金一片
右御授被成下奉謝候可然
御礼御通達可被下候豚児方
へも御ていねいに御祝被下
?に短冊等めつらしき筆にて
秘蔵可仕候
百詠一巻いつれも??にて
?目にわかちかね候へ共?
御望み??返上仕候
雅言集覧其後たいくつ
いたしすて置候都てふりも
いまた後篇出来不致候
六百番清澄企候へ共焼宅
のさわぎにて万事盛砂
文丸両人にてせわいたし候
然処老夫も霊岸島へ引
うつり候に付四谷とは大に
境へたゝり便り不自由に相なり候
右六百番も当月かぎりにて
卒業ニ成よろこはしく存候
五会分ハすり本まゐり候而
御覧被下候事と奉存候実ニ
即席に筆をとりミなミな
とりまきをりせがみし事にて
おもひつきも出来不申大
ふらちなる事共?入相たる
に有之候
小子此節霊岸島之二階住居
いなり橋と高橋とを一めに
見わたし富士も見え候所也
両三年已前のことく御下向
もあらは一入なることゝ存つづけ
候事ニ有之候其外さしたる
ことなし先御報申上たく
如斯御座候謹言
五老山人
十月十三日
雲多楼大人
語注
*方金 方形の金貨。江戸時代の一分金・二分金・一朱金などをいう。(コトバンク)
*焼宅のさわぎ
*霊岸島へ引うつり 粕谷宏紀著『石川雅望研究』「文化十~三年の間、霊岸島湊町に転居」とある。春足の初回雅望宅訪問は文化九年。それより「両三年」は算用が合う。
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