やおれあこやなとて琴をはひかさるやすらひをろハ
あとくらましゝ夫かありかをあきらけくいはんとにやと
???かさねとふこの重忠か心のそこハしらされと
あなかちに琴ひきよせつされと男のゆくかたいはんすへ
なけれはこゝろハたまことのいとゝ共にみたれぬそもむかし
枯師(?)となつけし船ありきそれか朽たるをその木もて琴に
つくりけれはえもいはぬ音をいたしてとほき里まて聞え
わたりぬとそ此琴のねいろそれにハおとらさンめれと月比
のうれたさに声(?)さへかれぬまいてこゝろたましひも身に
そはれてかいうしなへるうき舟のよるへなくたゝよふ
こゝちせられてわりなけれととかくしてしらへかきあはせつ
かけといふも月きよしといふも月なれやかけきよき
雪のいろなからにこれる水にやとらすとうたふ重忠
みゝをそはたてつゝ聞をはりて今のこくハ花くみとかいふ
ものをおのれか身のうへにとりなし夫のゆくへしらさるよし
を唱哥にそこめたるそハとまれかくまれおのれかけきよに
あひそめしハいつの時にかいかなることのよすかにてふかき
いもせのちきりをはかはしゝととふこハ思ひ給へかけさる
ことやうなる仰せにこりさるハなにこともむかしものかたり
となり侍りてきこえんもはつかしく侍り平家の御
一門の栄華のさかりを花にくらへてきこえはやしゝ
春のころほひ此見たまへなれにし人は山鳥のをのなか
くしき師山をしもこえ給ひて清水なる大ひさ舟
月ことにかちよりそまうて給ふ五条坂ハゆきゝによき
ぬ道にし侍れはかたみにみえしらかひてふりはへなのり
あふとしもなく御かり衣の袖ほころひぬぬひつけて
まゐらせんなとされかゝりぬる時も侍りあるハにはかしくれ
にわひにたりかさかしてよとの給ふにもいとやすきことゝ
うけひきつふりしきる雪のあしたにいひをけの火かき
おこしつゝ空もわりなうさへまさりぬ湯きこしめせ
なとあへしらふかくてしたしさもいやまされはさかつき
とうてゝすゝむれはのみほすしりめもたゝならすこなた
にしたへはかしこにも秋萩の?くまさゝのあられおち
やすけにそふるまふめるさは月ころすしたてまつる
普門品のくとくにこそとかつかつをかミつそのかミはつか
あまりいつかの夜とかたらひあはせしもしるくこよひこそ
とうれしきにひきまくらして侍りきこれをうちとくる
はしめにてまめこともされこともこめすいひかちし侍りて
下の帯のむすひめかたくはしめをはりのけちめもみせ
侍らねはおかしき恋路に?そあん筏とたのみわたりて
こそ侍りしか寿永とまうすとしと成ていちはやき
秋風あらましくふきわたりてよりすまあかしとうらつた
ひしてこきゆく舟のあとなきことゆきかくれ給ひしこそ
へたての関とハなりにて侍れいまさら思ひ給へいて侍るにも
むねいたうかなしさまさりて侍りとそかたりたる
夕方
いぬるとしのしはすよりかそへみ給ふるにはや一とせに
なりにて侍りこそことしととしをこへぬれとおとつれを
たにしたまはすさるハいかはかりのものおもひかつもりぬらん
さてなんあつしさもまさりゆきてかうさまにやせさらほひて
侍るをわきみの御目にハ御覧しいれぬにやせんやくと
??とハさらなりはりのくすしはらとりの人々にたす
けられてからうしてはかなきたまのをゝつなきとめて
侍りけふたまさかに見へたてまつれはあまえてよろつ
かたらひきこへなんと思う給へて侍るをなかなかにうきめ
みせつるはいかなる御こゝろにかまろにあたなるこゝろとし
侍るはふみにしりてのミおかせ給ふかうちたゝきのミして
やみたまふにや今ハたゝよわりによわりてなかはゝなき人
となりたんなりゑましき御かほををこそ見給へまほしけれ
きすくにおはすこそつらけれとかきくときつゝなきわふる
さま袖たもとにハそらにしられぬ雨のふりいてゝ衣に
逢たる玉あられにきそひて落くるにそこよなきいろ
をはぬらしそへたる
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