十月廿三日之貴書到来
拝誦仕候寒冷甚布候へ共
御多福之由奉察居候
然は雅言集覧六部着
いたし候由被仰下承知仕候
但右之本文丸清書之節
さかしらに濁りを加へ候処
誤り有之候あらましを左ニ
申上候
一ノ廿八丁 いづちの所
夜ふかくなきていつちゆくらん
〇此ふの字濁りたるは誤り也
一ノ三十 いろふの所
不可相倚
綺也
一ノ四十丁 いまの所
ねさめをかれん
をはせの誤り
一ノ四十八 いふきおにの所
あさつの舟
あさつま舟也
一ノ五十八 いひなかすの所
山口ハ
川口の誤り也
二ノ巻十九 はつけふりの所
これやさハ
はの濁りいかし
二ノ巻 卅四丁 ぞうそくの所
ふたあゐのこうちき
き文字濁りてハわろし
二ノ五十二はひつたふの所
さがしき
此濁りわろし
二ノ五十三 に
月かけを(に)いろにてさけ〇卯花ハ
る文字脱たり
三ノ二十六 とほめの所
ものぶかけにミへて
此ふの字濁るへからす
三ノ卅三 とりあへての所
こうちき
此き文字濁るハいかゝ
三ノ四十四
とんしんち
とんよく
此二ツのと文字濁るへからす
一ノ七十 いかりの所
いせ物かたり?故うたえすハ
此はの字濁りたるハ誤り也
一ノ四十八 ウラ いひの所
あひしらはす
あへしらはす也
一ノ廿六 いそなの所
わたつ海の
此た文字濁るへからす
此外にも濁るましき文字も
にごり候事文丸の悪くせ
にて候御覧の節御なほし
置可被下候
月辺(迫?)嘸々後取込と被存候
先ハ御返書なから申上候寒冷
御自愛可被成候以上
五老拝
極月三日
六々園大人
気づき
○雅言集覧六部と言うのは春足が十一部注文したうち五部しか送っていなかったので残り六部を送ったということか(書簡2-21-2参照)
○送ったけれども多くの箇所に誤りあり。ほとんどは濁点を打たなくてよいところに濁点を打ったもの。この誤りは清書した文丸が「さかしらに」(利口ぶって、差し出がましく)打ったもの。訂正願いたい。今では信じられない話。これは古文に通じ、妥協を許さない雅望の性格からしてあまりにも基礎的間違いであり、また多すぎるから雅望の言う通りだろう。
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