捨る身を何たしなミの
髪化粧わかれの櫛の
はかなくも通り過たる
夏の雨
くもるは
鏡の
とか
ならて
胷の煙を
蚊やり草
ゆふへのまゝのまゆすミも
薄きえにしとたけ長に
結ふのかミのつらにくや
にくやわれからねるくせつけて
やるかたもなきあふら手を
ぬくふちからもなよ竹の
ゆひさへほそるうき身
かな 右???尼
馬琴述
語注
*胷 胸の別体字
*滝沢馬琴 明和四年~嘉永元年(1767-1848)山東京伝に入門していた時期もある。
気づき
○十辺舎一九の扇面2-20-1と同じく雅望の仲介により手に入れたものか?七五調の艶めかしい内容。清元か何かの詞章と思われる。学識あふれる漢文翻訳調の文体を得意とする馬琴にしてはやわらかすぎる内容なので、最後の「右」以下からの引用であろう。
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