新年之御多御同慶
祝納候弥御万福奉
察居候?生無事
罷在候御安慮可被下候春興
御あつらへのすり物出来
いたし候ニ付御届申上候但
御年書正月十七日ニ着いたし
同十八日ニすり物師へ申
つけ?分いそかせ候て
やうやう今日出来いたし
宿御店へ向ケ差出し候(?)
旧冬別帋御文章達候
飲食狂哥合之判語思召
にかなひ候趣恥入奉存候実ニ
いつの月もいそかしくせきたて
候てしたゝめさせ候故とくと
考へ候事もなく誠ニ誠ニ
出傍題と申物にて候
かほるの仮字の事委細
被仰聞御説承知いたし候
これハ小子ハ東遊歌の
真字本により候て加保
利の仮字を用ひ候かたよろしく
とおほへ候すべて古学と
となへ候やから強て当流
の仮字をため候て人の耳を
おとろかし候事をやくと
いたすこと真(淵?)の翁よりこなた
皆さやうに候へ共今の仮字も
いにしへニ據有之候ハ用ひ
候方おたやかなるへく存候
むべ
これもふるくハ宇倍ニ候へ共
古本催馬楽の本に候ハ
己乃止乃波牟戸毛止美
介利とあれはむべとかき候
もくるしからすと存候
うまご孫
これも日本霊異記にしか見へ
候へとも今ハ和名抄の無万古
を用ひ候事也
此外をこたりをごりの類
ふるくハ仮字とも見へす候へ共
古学のやからおこたりおこりと
かきて強て説をつくり候こと
甘心いたさす存候
おかし
これハことに物語にあまたミへ
たる詞にていつかたもいつかたもおかし
とかき候ことを江戸の古学家
蜻蛉日記のいかにつゝしのをか
しからましの哥を證據として
ヲカシと認候事也されと
むかし物語にみなおかしと
見えたるをことことくあやまり
也と申かたくこれハ本居翁
のオムカシの説に従ひ候かた
おたやかに存候
とのゐ
これハ後の物なから宇治拾遺に
殿居所とあれはトノ井とかく
へくしかるを古言俤ニトノイ
とせるハなかなかにあやまりなる
へくおほへ候道理も殿にをる
なれハとの井とかくへきことわり也
ミやつかへ人の里にあるを里ゐ
といふにてもしるへき也
此ほかあまた可有之万々
春なかに可申上候先急便
早々認候謹言
五老
二月四日
雲多楼大人
気づき
○春足が雅望へ「春興のすりもの」を頼んでいたこと、「飲食狂歌合」の(雅望の)判詞を春足が肯定的に受け止めたことなどがわかる。また、「むべ」「うまご」「おかし」などの仮字はどう書くのが正しいかなどの質問を提出していたこともわかる。雅望はそれに対し古本催馬楽、日本霊異記、宇治拾遺など古今の作品を引用しつつ丁寧に、また今でも納得がいく返答をしている。これからも春足さんの研究熱心なこと、雅望の古典に対する造詣の深さがうかがい知れる。
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