八ゝ 続万
寄風雅
不逢恋
風ひきしわれより
君かくさめせん
うハさのミしてくらす此ころ
八ゝ 続万
鷺
此鳥を
にくき
なりとは
いにしへの
清少納言
なにも
しらさき
八ゝ 続万
松
むかしから幾代
経ぬらむ其数も
忘れ艸生
岸の姫まつ
*此鳥を/にくき/なりとは/いにしへの/清少納言/なにも/しらさき 「鷺は、いとみめも見ぐるし。まなこゐなども、うたてよろづになつかしからねど、「ゆるぎの森にひとりはねじ」とあらそふらん、をかし。」(枕草子 鳥は)
十ゝ 続万載
夕立
大降に暑さも
今はさめ鞘の
しりからはける
夕立の雲
八ゝ 続万載へ加へし(候?)
月前梅
分兼つ右左から
袖通す
月の光と
梅のにほひを
仝
くゑんしの
朧月夜に
咲く梅の花は
薫るの大将そかし
(右下の評)
くゑんしとかき候ても
けんしとよミ候ことと
存候しかれハ四言の句にて
いかゝ
*評の意味 (「源氏」を)「くゑんし」と書いても「げんじ」とよむから「くゑんしの」と無理に五字にしなくても「けんしの」と四字で表記していいだろう。
八ゝ 続万載集へ加入
午のとしのくれに
弁慶の力も
かもなくれて行く
午のとしの尾引て
もとさむ
六ゝ
(朱書)
これよろしく候へ共さきさき申ふるしと也
さて薫のかなハ季鷹の説の
ことくカホル可然存候真字
東遊に加保利安不と見へ候
万葉六なる香乎礼流の乎ハ本の?と存候
梅
もろもろの花のさきかけ
これ見よとかをり突
出す園のやりうめ
七ゝ
梅香入閨
おほろ夜に
こすものは
なしと聞しかと
寝屋の戸こして
匂ふ梅かゝ
*朱書の意味 この歌は悪くはないが前々から申している通り?です。「薫」の読みは(賀茂)季鷹の説の通り「カホル」と表記するのが適当と思われます。真字(漢字表記)では(万葉集)東歌に加保利安不(かほりあふ)とあります。また「万葉六」には「香乎礼流」(かをれる)と表記したものもあります。「乎」(を)は「本」(ほ)の(同音字?)と思います。
*もろもろの花のさきかけ/これ見よとかをり突/出す園のやりうめ やりうめ【槍梅】 ウメの一品種。花は白く、やや淡紅色を帯びる。(精選版日本国語大辞典)
八ゝ 続万載
蘭
女郎花
なまめき
たてる秋の野に
何いんきんの
藤袴そも
八ゝ これも続万載集へ
帰雁
咲花を見すてて
帰るひかことは
これや伊勢男の
天つかりかね
八ゝ これも続万載へ
霞中帰雁
帰りても
秋は来るてふ
かりかねの
受合にたつ
春霜かも
*何いんきんの夢袴そも どうして藤袴だけがご丁寧に袴など着て立っているのか。女郎花・藤袴ともに秋の七草。
*咲花を見すてて/帰るひかことは//これや伊勢男の/天つかりかね ひかこと 僻事、まちがい。
*帰雁をよめる 春霞立つを見すてて行く鴈は花なき里に住みやならへる(伊勢 古今集春)
*受合に立つ 保証人になること 春霞の中、花を見捨てて北へ帰るという雁も秋には必ず戻ってくるよと保証人を引き受ける春霞だなあ。「雅」の中に「俗」を持ち込む狂歌の手法の典型。秀逸。
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