六々漫談書冊(版本・狂歌集・自筆稿本等)

『吾嬬日記』と題する遠藤春足旅日記(序文・大江広海、石川雅望)

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020003

文政七年
 東日記


遠藤春足が阿波から江戸へ行く道中を記した旅日記。遠藤家は藍商を営んでおり、江戸にも店を置いていたが、春足は三、四年に一度様子を見に江戸に出向いていたとのこと。今回の吾嬬あづま日記(表紙には「東日記」)は文政七年(1824年)三月十六日から四月二日にかけてのもの。

序文(大江広海、石川雅望)

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020004

あし曳の山のち?かけとも所ともにおきて
させられしよりひむかしの国の海へた西国の
うらつたひすきすきに書ら気もてゆきてぬて
ゆらくはゆまちやちまたになむわかれ来
にけるしかはあれと鳥かなくあつまち
の今のいきかひハかりミさかりにきまたるハ
あらさりけらし草枕たひのすさミのかき
にきともあまたあなるかなかニ紀朝臣の

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020005

はかりめてたきハあらぬにやあるハしほうミの
ほとりニてあされあへるあるは一文字を
たにしらぬものらかあしは十もしにふミてそ
遊ふなといひてなほと??しあされ
はみたる筆つかひのなかなかにほひありて
千とせののちさへそのおもかけみるこゝち
してすゝろかるくなりこゝに此日記はしも
山のたゝすまひ水のなかれをしろき松ハらの

けしき?へてたれもたれもしるしつへうあめる
ことゝもははふき高い者?朝鳥のあさ
立いつるあしもとゝろくかきろひの
ゆふさり屋とかうまやのたハわさまてけに?
いひのつまことしひの葉のしたゝりつゆ
もらさぬおかしさかきりなしや我はた
所のかみ度々往かひなつかしまるれハかへさひ
よミ?さなりさなりとうべなひたりき

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020006

文政十一年八月      大江広海(後注)


道のゆくてに筆をとらんことやすき
に似てかたしともかたしけはしき山
路底ふかきわたり川なとゆきやす
からんやはふるさとのとほくなるをかへ
りみゆくさきのはるかなるをおもへハ
おかしきけしきもものにもあらすされ
ばみちの記にしるしゝ歌ともハつねの
歌とハやうかはりてすくれたるものすくなし

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020007

とある人はいひきこのさうしは阿波
の国なる六々園のあるしか文政七年
の春大江戸のかたにくたりけるときみち
すからかきつゝりたるものとなん此ひとハ
本居宣長か弟子にてことのはのみちを
かしこくさとりてかのあたりにてもみな
かたさりてつゆをこつく人な?とそきくハ
およひぬるけにふミのさまいさゝかあやまてる

たきまていといとめてたくにしるしつけ
られたるこれにはしかきせよとのたまひお
こせつれとあつま人の口にかけてとやかく
やとほめ聞へんハなかなかにものそこなひに
やとおもへはせためんくちをふたかんはかり
に横なまりたる声をひそめてかたつかた
をのミのはへてやミつ
           六樹園のあるし雅望

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