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別世界なる吉原もけさはみな/やすみししわか大君の春 和琢舎綾丸
たから舟敷寝の床に傾城も/身うけてもらふ夢やミるらん 手枕歌種
宝船しきねのよへの夢ならて/?るにふし見るさとの身仕舞 綾丸
万歳の立まふふりにとつとつと/わらふや春の山口巴 雅雄
はりをもつ其吉原のけいせいの/見たるもやはり茄子の初夢 野暮齋高行
七種をしまひの家ハとりわけて/はやしてのあるたいこ三絃 住の江右丞
なゝくさをはやせる頃におさらはと/客の背中をたゝくおいらん 物乃早丸
かゆ杖のしりハともあれおいらんの/まへをたゝける柳茶の帯 四国猿人
おいらんハひとり寝をする元日も/口をすひあふ門の掛鯛 祢太楼起魚
起請かく紙ほとになる薄氷を/小指ておして見たるけいせい 悟堂為成
紙てせしくしを出せはけいせいの/よりによりてそひける福引 針業右大尽
かふろらもとその機嫌か手鞠には/ひさつき出して見するかはらけ 右丞
客人のあそひに不自由なけれとも/梅はかなりにをりしよし原 古連似定丸
生酔の客はかりかはよし原に/舌のもつるゝかこのうくひす 右大尽
梅かゝをたもとにとめてかへろかと/客をはたかにしたる傾城 猿人
ゑひとれの客のあしより吹風に/杖のもつるゝ見かへり柳 詩庵季兼
たいこもちも酒の坐のミかけさは又/仏の坐まてはやす七草 定丸
出世する事をいはうて禿から/おいらんまてものほるとそ酒 早丸
見せさきの出ぬ元日の夜もやはり/門にふらつく注連の橙 起兼
三味線はまつさしおいて芸者らに/福引ひかすはつはるの客 紀の都哥奴
うそをのミつく吉原は正直の/神をは棚へあくる元日 猿人
鶯はかはぬ茶屋にも朝毎の/むかへのかこはミゆる吉原 月花卯時
台にして座敷へ出さん福寿草/さいたる花の色もきのし屋 志良奴道成
かの茸に似たもの祭る故なれや/門門に松たつるよしはら 季兼
門松の太夫根引にさせたるは/とし徳と名をよへる大神 綾丸
そのむかし女郎の罠にかゝりたる/人々化くるとしこしきつね 哥種
七種のほとけの座をハいはふにも/まつかみの座へなほるおいらん 起兼
文月の灯籠はかり正月も/軒に火ともすよし原の梅 時雨庵濡丸
今朝いはふその正月の言葉とそ/うそのはしめのさとの挨拶 淡州仮屋 月廼屋兎遊
芸者らかさわきの外に七日には/さみせんくさもはやすよし原 猿芸楼皺連
たからふね敷寝の床の初夢に/ふしひたひをもミするおいらん おなしく
けいせいの寝間に立たる帆柱の/数やいはゝん三河万歳 時鳥沓持
おいらんも羽子や手まりを一とせの/つがはしめとやもてあそふらし 友之亭小雪
欲界の仙境なれや/よし原も/春は屋毎にうつす蓬莱 江戸在阿波 六帖園雅雄
千金のはるのあそひかうくひすの/よむ哥之助/梅かからうた 六々園
語注・気付き
○「阿波六々連」総出演とみてよいか。北渓の画は秀逸。江戸の一流画家に頼むのはさぞかし金がかかっただろう。右から二番目、(黒い打ち掛け)紋「五側」に注意。こういう場合、絵と文字は別版ということも考えられる。雅雄は春足さん宅滞在中と思われる。
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