桜
唐土の海棠なとにくらへては
けに提灯とつりかねさくら 抜足
柏木の右衛門さくらに直そひて
かせにむつるゝから猫柳 抜足
名所雪
駒とめて駄賃を拂ふ陰もなし
さのゝわたりの雪の夕くれ 雲多楼
語注・気付き
3-41-1 唐土の海棠なとにくらへては/けに提灯とつりかねさくら
*狂歌短冊3-40-5に同じ
3-41-2 柏木の右衛門さくらに直そひて/かせにむつるゝから猫柳
*柏木 『源氏物語』に登場する架空の人物の通称。「柏木衛門督」とも呼ぶ。頭中将(内大臣)の長男。「柏木」とは、王朝和歌における衛門府、衛門督の雅称である。光源氏の息子・夕霧の友人。源氏(六条院)の妻・女三宮と密通し薫をもうけたことで源氏(六条院)に睨まれ早逝する。柏木と女三宮の密通は若菜下で唐猫が風に揺られる御簾にからんだことがきっかけとなる。
3-41-3 駒とめて駄賃を拂ふ陰もなし/さのゝわたりの雪の夕くれ
*駒とめて袖打ち払ふ陰もなし佐野のわたりの雪の夕暮れ 藤原定家(「新古今和歌集」巻六 671)
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