書簡

花たりの君宛て春根書簡

撮影:四国大学 / 分類:手鑑1-26-1

さいつころハまうて給ハりいと
嬉しくこそ其をりからかし
給ハりし鉗狂人衝口発の二書
見侍るにめさむるはかりおもしろき
事になむ姓氏録の中の文字の
脱漏をくハしく考へし論らひ
又から国の代々の歴史とも
あまた是かれと事跡年号時代の
違ひめ伝写の誤なとこまかに
弁せられたるなとその見解の
精密なる事ちかきころ名に聞えし
皆川氏栗山氏とかいふなる
すさ共もいかてかうハ弁し
わかたむや此翁ならてハといともいとも
尊くなむ見侍りつるとりわきて
ふみのしりにかい添へあなるみ艸の

撮影:四国大学 / 分類:手鑑1-26-1

うへの物語なむいひしらす
おもしろくもおかしうも侍りて
けにおほろけのものゝ及びかたき
作りさまに侍りかくて長歌
ひとつふと思ひより侍るまゝに
書つけ此ついてに見せ参らせつ
つれつれの御心なくさに御覧し
侍れかし又かのあかたゐの集ハ
ある人のかりかし置つるをちかきうちに
とりよせて見せ参りすへくなむあなかしこ
             春里
やよひの比
花たりの君

語注

*鉗狂人衝口発(けんきょうじん・しょうこうはつ)江戸後期の国学書。本居宣長著。天明五年(1785)成立。文政四年(1821)刊。藤貞幹の衝口発が中国・朝鮮の史書を無批判に受け入れて日本上代の史実・風俗を論じているとして、古道観に立脚した反論を三十五箇条にわたって展開したもの。記紀を論拠として、我が神代の不可思議を無条件に論ずるという態度が顕著であるが、朝鮮史の批判にすぐれている。書名の「鉗」は「首かせをかける」の意。(コトバンク)

気づき

文中にある長歌は書き物1-26-2参照

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