資料考察

2025年2月14日 四国大学講演会資料

冬籠ふゆごもり春足文書ひもとけば/笑ひ満載まんさい狂歌書きょうかしょの山

仕掛け(修辞・技巧・工夫)

 1 枕詞まくらことば 冬籠り→「春」にかかる。
 2 掛詞かけことば まんさい→満載と万載(万載狂歌集)をかける。
      きょうかしょ→狂歌書と教科書をかける。

 このようにたいていの狂歌には「仕掛け」が施されている。
 それを読み解くのが楽しみの一つ。

春足はどういう時代に生きた人か?

【気づき】
  ①狂歌全盛時代の天明期・文化活動上窮屈な時代だった寛政の改革時期を外している。
  ②春足が比較的自由に文化活動を出来たのは祖父の死以降。
  ③この文書に残されている有名人のほとんどは同時代の人。
    例外  本居宣長  一世代前
        上田秋成  同
        蔦屋重三郎 同

春足年譜

①20歳ごろ和歌に興味を持ち始める。
 和歌・古典への関心
  「百人一首初山踏」→「古今集打聴」→「同遠鑑」
   →「伊勢物語古意」→歌よりも文章→「源氏物語玉小櫛」
   →「伴高蹊訳文童諭国文世?跡」「鈴屋集」「日本書紀」
  「古事記伝」「万葉集」→ふかく吾国のいにしへしのふこころいてきつつ
   いかて皇国の神の道をも明らめしらまほしくおもうようになり
   →鈴屋翁の著作→長歌・短歌試みる

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2102219

②寛政四年(11歳) 父・母、相次ぎ死去。祖父の後見で家督を嗣ぎ、五代目遠藤宇治右衛門を名乗る。

③文化五年春(27歳) 金比羅参詣・旅日記「袖の家つと」二巻
 誹諧歌めいたもの一ツ二ツ詠み入れた。

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2102220

④文化六年(28歳) 祖父死去。

⑤文化七(29歳) 六樹園入門

撮影:四国大学 / 分類:手鑑2-1-1

  素麺一箱

撮影:四国大学 / 分類:手鑑2-2-1

  花もなき夏の梢にそよとふく
  風のたよりそうれしかりける  雅望

⑥文化九年(31歳) 大平入門

撮影:四国大学 / 分類:手鑑1-1-1

  「徳島人里春竹房両人ゟもすすめられ候由にて此度入門の思召
   にて詠草并道の御問等御見せ被成」

⑦文化九年(31歳)春、江戸下向、初めて六樹園に会う。
「万代狂歌集」24首入集。

撮影:四国大学 / 分類:手鑑2-2-2

⑧文化十年(32歳) 六々連・六々園発足。

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2102223

⑨文政九年(45歳) 雅言集覧大平序文仲介
  雅言集覧刊行予告・源注余滴校合中(文政元年頃?)
  雅雄、遠藤家逗留(2-12-2)
  雅言集覧序文本居大平へ依頼の件(2-12-3)
  雅言集覧校合中・源注余滴・あつまなまり進行具合(2-5)
  雅言集覧の校合に専念(2-5-1)
  やるき失う(2-8-1)
  再び専念(2-8-2)
  狂蝶子文丸書簡仲介御礼(1-28-1)
  雅言集覧校合すり送付(2-14-2)
  雅言集覧するたて送付 大平の序文催促(2-13-4)
  大平序文引き受けの知らせ(2-13-3)
  大平序文受取(2-14-3)
  雅言集覧四之巻 一部南鐐一片(五老書簡1-6-2) 
  雅言集覧大平へのお礼として水晶印壺贈った(2-27-3)

撮影:四国大学 / 分類:手鑑2-2-2

現在遠藤家に残っている「雅言集覧」

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P5190697
撮影:徳島県立文書館 / 画像:P5190699

⑩文政十二年(48歳)江戸大火 八丁堀出店消失。

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2102256

⑪天保五年(53歳)死去。

画像に描かれた春足

①春足像 軸

撮影:四国大学 / 分類:20231210-A17-2

            諸平
花鳥の色音をとめていにしへの
みちのおくさへ君そわけたる
           広輝画

②文政2年春興帖
(出板は1年遅れの文政3年)

撮影:四国大学 / 分類:手鑑1-19-2

これも又年代記にやしるしなん
星をふらする梅の下風

③狂歌作者部類

出典:国文学研究資料館データベース

鼻垂遠藤氏宇治右衛門阿州石井の人商家
雲多楼鼻垂

はらわたをたつてふ猿のさけふころ
ちしほに山のそまるもみちは

④狂歌水滸伝

出典:国文学研究資料館データベース

六々園抜足 阿波の国石井の住
遠藤氏豪吏にて家僕多し。
歌学を本居に学び狂歌は五翁の社に遊ぶ
庭中に築山あり。登れは則四方の好景を眺望して
其風流たとへんに物なし。
爰に座して書を読て日毎倦む事をしらすといへり。

たをやめの肌の雪にもつけてけり
もたせて寝たるおのかあしあと

⑤狂歌阿淡百人一首

出典:国文学研究資料館データベース

海棠をさくらのやうにおもふめり
芥子坊主らのをさなごころに
         六々園春足

⑥乙亥春興帖阿波六々園

撮影:四国大学 / 分類:手鑑1-27-5

阿波 六々園

十五ゝ
源氏なる若菜つむころ鞠よりも
風にくるへるから猫柳

⑦春興帖阿波六々園

撮影:四国大学 / 分類:手鑑1-28-5

よあるきをしかられもせす梅か香の
下露うけてかへる恋猫

阿波 石井 六々園

⑧狂歌歌歌留多

撮影:四国大学 / 分類:手鑑1-34-3

読み札 ウ 雲多楼鼻垂 そのもとは愛より出て藍よりも
取り札 ウ あをうなつたる恋病のかほ

撮影:四国大学 / 分類:手鑑1-34-1

歌かるたへも御佳作加入
仕候事にて候但そのもとは愛より出てと申
御歌なり

⑨徳島狂歌人群像図

左上

撮影:四国大学 / 分類:手鑑1-40-1

春足の狂歌

どういう形で残っているか?
・春足狂歌百首(書冊)
・誹諧歌五十首(書冊)
・短冊
・軸
・翻刻「吉原十二時」「万代狂歌集」
・書き物(軸にするつもりだったか?)
全部で500首くらい残っている。

春足の狂歌①

撮影:徳島県立文書館 / 画像:IMG_1535

  嵐山花
あらしよりくたす筏は猶にくし
ちりうく花をまたもちらせは

春足の狂歌②

撮影:徳島県立文書館 / 画像:IMG_1535

  人々とともに眉山の花を見て
人ハみな老をわすれて見る花に
なとてましろになれるまゆ山

春足の狂歌③

撮影:徳島県立文書館 / 画像:IMG_1540

  寄帯恋
繻子のおびとひて寝てからまたしゅすの
やうなはたへをしめるうれしさ

春足の狂歌④

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020342

  桜狩
たんさくの其大鷹を手にすへて
さくらかりゆく春の宮人

春足の狂歌⑤

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020352

  あさがほ(シュンの字 16画)
千世かいふつるへはかりかこゝろまて
今朝はとらるゝ牆の朝顔

春足の狂歌⑥

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020379

  たをやめの川わたるところ
御簾よりもすそをかゝけて高炉峰の
ゆきのはたへを見するたをやめ

春足の狂歌⑦

撮影:四国大学 / 分類:右から手鑑3-27-4、3-27-5、3-27-6

すきものといはるゝもむへ雪の夜も
いとはて寝やにかよふうめかゝ

春足の狂歌⑧

撮影:四国大学 / 分類:右から手鑑3-52-4、3-52-5、3-52-6

  旅宿花
かくはかりたちはおくれし旅衣
花をあるしのやとりならすは

春足の狂歌⑨

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2102224

  始皇本紀をよみて
秦の代のつひほろひしもことはりや
始皇の阿房超高の馬鹿

春足の狂歌⑩

日は暮れぬ月はまた出ぬ闇の夜の
六つのちまたに君のみそ立つ

春足の文章

残された目録

A 「六々園著述目録」(「白痴物語」最終ページ広告)(「東日記」最終ページ広告)

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020038

 春屋集   前編三冊 哥の部 文の部 誹諧哥の部
 春屋詠艸(春屋集と同一か?)(P2101598)
 春屋随筆  初篇二冊(三冊) 
 白痴物語  全二冊  巻之上「何かし藤の花を見てたむざくつけたる事」別資料3
 同拾遺   二冊
 猿蟹物語  一冊 チラシP09021 表紙P20202055 猿蟹物語P2020214 P2020221
 桃太郎物語 一冊
 一力物語  二冊 
 中古笑話  前編二冊、後篇三冊
 中古俗語考 三冊
 吾嬬乃日記(東日記) 一冊 P2020003
 同 附録  一冊
 宇治能須佐備 初篇三冊(十冊)

B それ以外
 難後言 一巻(「日本随筆大成」第三期第六巻)(吉川弘文館昭和五十二年)   難後言 (清石問答について(2-33-3)
 六々園漫録
 六々園狂歌集など。(以上「難後言」解題)  
 宇治のすさひ(広告だけ)
  宇治のすさひ(「宇治のすさひ大感心、面白く覚え候。今四、五冊ばかり有之候はばよろしく存候。」(文政六年十一月二十一日付、
  春足宛て雅望書簡。
  「本書は企画に終わり、刊行されなかった。」粕谷281ページ 2-33-3 チラシP2090115)
  桃太郎物語狂歌合 六々園撰 賀茂季鷹序 チラシ (P2101554 ) 
  芳野物語(前三冊後三冊)(P2020039)

春足の文章①

白痴物語(文政十一年)
 菊池五山漢文序(3-11-1)
 六樹園 和文序(3-10-3)

巻之上「何かし藤の花を見てたむざくつけたる事」(同 挿絵)

春足の文章②

吾嬬(東)日記)(文政七年1824)

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020036

(P2020036 箱根越え)

(同 行程図)

春足の文章③

難後言(天保三年1832)

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2102269

清石問答

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