書冊(版本・狂歌集・自筆稿本等)

六樹園撰 春足狂歌百首(題簽なし 仮題)

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020371

 千鳥

蜑人の藻しほ
やくてふ須磨のうらに
あなかまさわく
むらちとりかな

 鷹狩

えものをは
置て思ハす
そのすゝの
からからからと
笑ふ鷹かり

蜑人の藻しほやくてふ須磨のうらにあなかまさわくむらちとりかな
*あなかま 「あな喧し」(ああ、やかましい!)

えものをは置て思ハすそのすゝのからからからと笑ふ鷹かり
*からから 鈴の音「からから」と「からから笑う」を掛けているか。

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020372

 其二

くつのこと浮ミて遊ふ
水とりをたちまち
あしにかくる大鷹

 竹雪

竹と竹
角觝の如くくミ
あへは我もこけしと
りきむ雪ミち

くつのこと浮ミて遊ふ水とりをたちちまちあしにかくる大鷹
*大鷹が水上で遊ぶ水鳥を捕獲する様をまるでくつを履くがごとしと見たか。

竹と竹角觝の如くくミあへは我もこけしとりきむ雪ミち
*角觝 相撲。

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020373

 又

芥川のむかし
もかくや雪女
背おてミゆる
業平の竹

 原雪

梢から
こほれかゝるも
ことわりや
十月の
上の大はらの雪 ?

芥川のむかしもかくや雪女背おふ(う)てミゆる業平の竹
*雅望は春足の「音便化」の箇所を訂正しているところが多い。
*伊勢物語 芥川の段 身分違いの女を盗み出しその女を背負って芥川を渡る場面あり。

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020374

 逢恋

ゆひさきもちゝむ
はかりそつめたうも
なけれとゆきの
はたにそふ夜は

 後朝

別れてもやはりめさきへ
ちらちらといもかはたへの
雪のふりかく

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020375

 寄山恋

たをやめの
ひたひのふしはさも
なくて胸の
けふりはわれそ
たえまぬ

 寄短冊恋

たんさくも
風に飛立うれしさや
こよひ逢との哥のかへしに

たをやめのひたひのふしはさもなくて胸のけふりはわれそたえまぬ
*惚れた女の富士びたいは何の変化もなくて、自分だけは胸の中で(富士のように)くすぶり続けている。

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