千鳥
八
蜑人の藻しほ
やくてふ須磨のうらに
あなかまさわく
むらちとりかな
鷹狩
七
えものをは
置て思ハす
そのすゝの
からからからと
笑ふ鷹かり
蜑人の藻しほやくてふ須磨のうらにあなかまさわくむらちとりかな
*あなかま 「あな喧し」(ああ、やかましい!)
えものをは置て思ハすそのすゝのからからからと笑ふ鷹かり
*からから 鈴の音「からから」と「からから笑う」を掛けているか。
其二
八
くつのこと浮ミて遊ふ
水とりをたちまち
あしにかくる大鷹
竹雪
八
竹と竹
角觝の如くくミ
あへは我もこけしと
りきむ雪ミち
くつのこと浮ミて遊ふ水とりをたちちまちあしにかくる大鷹
*大鷹が水上で遊ぶ水鳥を捕獲する様をまるでくつを履くがごとしと見たか。
竹と竹角觝の如くくミあへは我もこけしとりきむ雪ミち
*角觝 相撲。
又
九
芥川のむかし
もかくや雪女
背おふてミゆる
業平の竹
原雪
八
梢から
こほれかゝるも
ことわりや
十月の
上の大はらの雪 ?
芥川のむかしもかくや雪女背おふ(う)てミゆる業平の竹
*雅望は春足の「音便化」の箇所を訂正しているところが多い。
*伊勢物語 芥川の段 身分違いの女を盗み出しその女を背負って芥川を渡る場面あり。
逢恋
七
ゆひさきもちゝむ
はかりそつめたうも
なけれとゆきの
はたにそふ夜は
後朝
八
別れてもやはりめさきへ
ちらちらといもかはたへの
雪のふりかく
寄山恋
八
たをやめの
ひたひのふしはさも
なくて胸の
けふりはわれそ
たえまぬ
寄短冊恋
八
たんさくも
風に飛立うれしさや
こよひ逢との哥のかへしに
たをやめのひたひのふしはさもなくて胸のけふりはわれそたえまぬ
*惚れた女の富士びたいは何の変化もなくて、自分だけは胸の中で(富士のように)くすぶり続けている。
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