書冊(版本・狂歌集・自筆稿本等)

六樹園撰 春足狂歌百首(題簽なし 仮題)

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020366

 墨竈

熊樫や乕の尾さくら
きりくへて
けたもの炭を
やける山賤

 炉火

名にしおふへる
さくら炭とて
はひまても
やはり真白き
雪とこそなれ

熊樫や乕の尾さくらきりくへてけたもの炭をやける山賤
*乕 トラ

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020367

 あられ

はりはりと
いふた障子は
さもなくて
かへはやふれつ
夜半のあられに

 神楽

夜神楽の寒さを
しのきうたへるはこや
吸ものゝ鴨の御社

はりはりといふた障子はさもなくてかへはやふれつ夜半のあられに
*はりはり あられの打つ音「ばりばり」を「張り張り」に掛けるか

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020368

 また

宮造(?)も寒さ
しのかむ吸ものゝ
鴨の社にうたふ酒との

 寒芦

雨に騒く人の往来に
ひきかへて
風にさわける
あしのおとかな

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020369

 氷

諏訪ならて
硯のうミの
氷をも
わたるはやはり
狐毛のふて

 網代

魚のミか松(杣?)山おろし
さゆる日は紅葉の
ひをもとむるあしろ木

諏訪ならて硯のうミの氷をもわたるはやはり狐毛のふて
*諏訪湖 御神渡 諏訪湖の湖面が全面結氷し、寒気が数日続くことで氷の厚さが増してゆく。さらに昼夜の温度差で氷の膨張・収縮がくり返されると、南の岸から北の岸へかけて轟音とともに氷が裂けて、高さ30cmから1m80cmくらいの氷の山脈ができる。これを「御神渡り」(おみわたり)と呼び、伝説では諏訪神社上社の男神・建御名方神(タケミナカタノカミ)が下社の女神・八坂刀売神(ヤサカトメノカミ)のもとへ通った道筋といわれている。 (中略)一般的に御神渡りは、上記の通り建御名方神が八坂刀売神のもとに向かった跡であるとされているが、別の言い伝えで諏訪明神の御使である狐の所為だという俗信もある。(立命館大学 Z0688-2-030 – ArtWiki による) おもしろい。

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020370

 また

あしろ木になかれて
よるの紅葉ゝのひをも
れかるらし宇治のさと人

 水とり

ミなひとの
羨む鷹を夢ミてや
おとろき騒く
夜半の水鳥

ミなひとの羨む鷹を夢ミてやおとろき騒く夜半の水鳥
*ミなひとの羨む鷹 初夢に見ると縁起がいいとされたもの「一富士二鷹三茄子」
*おとろき騒く夜半の水鳥 平家物語 富士川。

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