書冊(版本・狂歌集・自筆稿本等)

六樹園撰 春足狂歌百首(題簽なし 仮題)

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020385

十五ゝ
たんさくの
その大鷹を
手にすゑて
さくらかりゆく
春の宮人

十三ゝ
みな人のうらやむ
鷹をゆめミてや
おとろきさわく
夜半の水鳥

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020386

十三ゝ
時々のひやうしきのみか
かみなりのたいこも夢の
時はたかへす

十三ゝ
仙人はしらす
われらも春の野ゝ
うま酒を出す
こしの瓢箪

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020387

十七ゝ
宮つこも寒さやしのく
すひものゝ
鴨のやしろに
うたふ酒との

十八ゝ
あしなかや
手なかしまにはあらねとも
これもにほんの
国の長人

撮影:徳島県立文書館 / 画像:P2020388

此二首大かたの人のよみ
うへき詩ならす有かたく
おほえ候
        六樹園

*此二首は最高点の「宮つこも」及び「あしなかや」をさす。「此二首は並大抵の人の読める歌ではない。めづらしいことと思われる。」の意味。最高の賛辞である。
*歌の数は全部で九十六首。それを春・夏・秋・冬・恋の五つに部立てしている。最高点は十八、最低点は六、平均八・三点。二十点が満点とするとかなり厳しい評である。
*なお、添削で多く直されているのは音便化したときの仮名遣い。たとえば「笑ふ」が接続助詞「て」に続く場合、「笑うて」となるが「笑ふ」はハ行に活用するため「笑ふて」と表記することである。この間違いは現代でもしばしば見かける。

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