十五ゝ
たんさくの
その大鷹を
手にすゑて
さくらかりゆく
春の宮人
十三ゝ
みな人のうらやむ
鷹をゆめミてや
おとろきさわく
夜半の水鳥
十三ゝ
時々のひやうしきのみか
かみなりのたいこも夢の
時はたかへす
十三ゝ
仙人はしらす
われらも春の野ゝ
うま酒を出す
こしの瓢箪
十七ゝ
宮つこも寒さやしのく
すひものゝ
鴨のやしろに
うたふ酒との
十八ゝ
あしなかや
手なかしまにはあらねとも
これもにほんの
国の長人
此二首大かたの人のよみ
うへき詩ならす有かたく
おほえ候
六樹園
*此二首は最高点の「宮つこも」及び「あしなかや」をさす。「此二首は並大抵の人の読める歌ではない。めづらしいことと思われる。」の意味。最高の賛辞である。
*歌の数は全部で九十六首。それを春・夏・秋・冬・恋の五つに部立てしている。最高点は十八、最低点は六、平均八・三点。二十点が満点とするとかなり厳しい評である。
*なお、添削で多く直されているのは音便化したときの仮名遣い。たとえば「笑ふ」が接続助詞「て」に続く場合、「笑うて」となるが「笑ふ」はハ行に活用するため「笑ふて」と表記することである。この間違いは現代でもしばしば見かける。
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