軸物

(本居)宣長の和歌「岡月」 (本居)大平による鑑定の和歌

撮影:四国大学 / 分類:20231210-A18-1

   岡月
いつとしもわかぬ梢に
さす影も月は秋なる
岡のへの松    宣長

撮影:四国大学 / 分類:20231210-A18-2

 遠藤春足の子かわか翁のかゝれたる
 岡月の歌見せてちかきころは鈴屋
 大人の筆の跡なりとてよからぬものゝ
 いつはりかけるか世におほくて人々の思
 ひうたかふをそのあかしになるへき一
 ことそへよといひおこせるによく
 見さためて
松枝のさしもしられてさすかけの
わかぬことなき岡のへの月   大平

語注・気付き

○A18-2 文意は「遠藤春足さんの子から「岡月の歌」(A18-1)の軸物を送ってきて、『これは本居宣長翁が書いた真筆ですか。近頃は宣長翁の書いたものとして偽筆が多く出回って、人々が真筆か偽筆か疑いますので、もし真筆なら何か(真筆であることを証明する)一言を書いてもらえませんか」という依頼があった。そこでつぎのような歌を詠んだ。

松の枝にさす月の光はよく知られているまがうことなき宣長翁の「岡のべの月」の歌である」というもの。A18-2はA18-1が宣長の真筆にまちがいないと保証する内容になっている。

徳田武氏ご教示分

いつとしもわかぬ梢に
さす影も月は秋なる
岡のべの松   宣長

遠藤春足の子がわが翁のかかれたる
岡月の歌見せてちかきころは鈴屋
大人の筆の跡なりとてよからぬものの
いつはりかけるが世におほくて人々の思
ひうたがふをそのあかしになるべき一
ことそへよといひおこせたるによく
見さだめて

松枝のさしもしられてさすかげの
わかぬことなき岡のへの月
     大平

口語訳

何年たったとも分らぬ古い梢に指す光も、秋の月のそれである岡の辺りの松であることよ。

遠藤春足殿が、我が宣長翁の書かれた岡の月の歌を私に見せて「近頃は鈴屋大人の筆跡である」と言って、宜しくない者が偽って書いた書が世間に多く出まわっていて、人々が疑わしく思うので、その正しさを証明することができる一言を添え書きせよ」と言い寄越したので、私は良く真偽を見定めて、
松の枝がさすがに明らかに知られるほどに射す月光によって
見分けられない事が無い岡の辺りの月であることよ

コメント

タイトルとURLをコピーしました