摺りもの

辛卯のとしのはしめ伊勢詣を題してよめるくさくさのされ哥

撮影:四国大学 / 分類:20230909-J84
撮影:四国大学 / 分類:20230909-J85

※以下、J84は4分割、J85は2分割して拡大表示

  辛卯のとしのはしめ伊勢詣を題してよめるくさくさのされ哥
宇治橋の上はかりかハ道中も銭をハまいて行伊勢参        九日庵
海老の名の伊勢のたいたい打乗てゆくや蓬莱三方荒神       呼子
    ○五老人
しやくなしに達者て二度も逢ふ参宮たいたい重ねたおかけ也けり  古希翁 杣丸
おもしろや注連と霞を二見潟浪のおとめも打ませりつゝ      七十二翁 芦丸
報謝さへ多少の縁のいせ参袖と杓とのふり合せにて        八十翁 老丸
いせ路の馬かたさへもいさみたち心の駒をはしらせにけり     六十九歳 菊王
豊なる年にはいせの山田まて神のおかけていと実入よき      還暦翁 扇丸
    ○
近所へは沙汰なしにして宮めくり末社の禰宜もぬける神垣     巴字丸
銭てつらはるの参宮や間の山お杉お玉もはらは立まし       厚丸
わらんちのやうな小判をはたにつけ内ハはたしにしてぬけ参    菓子丸
内守る人の心もお留主なりミなたましひハぬけ参して       清光
日の神の御陰て参る人々も月のかたちにつゝく髪笠        桜茂
立なからお杉お玉か三絃の外にも霞ひく間の山          其国
をさな子も母のふところぬけ参ちゝたる春に喰うはか餅      内守
天照す神のおかけてはれやかにくらかり峠こゆ伊勢参       淵(?)丸
駕かきに大臣なとゝのせられて客は参宮に大夫着せり       十丸
三絃にいさミて心のり懸の馬も太鼓をうつ間の山         万年丸

    ○
我内を夜の間にぬけしいせ参思はぬ富士を見た二見潟       折丸
明つくるからすの宮の広前にさゝけし貝もあかねさす色      酒丸
伊勢参道の記にかきへらしぬる矢立の筆の坊主かくせよ      徳丸
附髪の坊主とちかひいせ参つとをもとめて帰りこそすれ      艶丸
猩々のやうに残らす杓もつてはめともつきぬおかけ参りは     管丸
谷の戸を明かたに出る鶯を道つれにして行いせ参         寿丸
天照お影参や道中は杓より外にふらぬ長閑さ           芦洲
内外の神両かけて参らんと先宮川てこりをとりぬる        ?業
朝熊から不二の高根を詠めけりくはへきせるの煙くらへて     木綿丸
半弓の矢を射ることくひきつゝきたいたいあてに行いせ参     亀孔
    ○
長閑さにあたまはかりかからたにも坊主合羽ハ見へぬ参宮     皇州 澄丸
春来れハ鶯さへも飛立て梅の木ちんて宿るいせ道         洛東 春屋
せんし茶か出る宇治橋に参詣のきせんもわくか如くわたりぬ    江戸生抜
宇治橋て銭をハなける参詣も霞の網にかゝるこのころ       平野 綿丸
いせ道ハ心をあらふ如くにそ旅のうさをもしれ井の水       仝 英棟
神さまも嘸ひとひやうしぬけ参しやくハもてとも勅使と違ふて   仝 梅丸
    ○
いせ参かねよりけつく杓ひとつ持しこゝろの底の丈夫さ    イヨ今治 羽雪
夜明ころ宿を飛出しまうつれハ末社に多くみゆ宮からす      仝 里狐
八十の末社といへハ国(?)のうちぬけ参りをそするお影年    仝 里川
とこ闇もはれし岩戸の跡なれハあなありかたきいせの神垣     仝 本成

    ○
あちらからぬけて参れハこちからもぬけるハいせの神のかこぬけ  通丸
天てらす神の恵ミにうかれ来て何くらからす参る横前       殿丸
けふはけに宮めくりとて留主事に末社をあつめ神酒祝ひぬる    昆布丸
蓬莱のさまミや川て迎へつゝ駕にのせたる太々(?)の客     邑丸
代垢離に罪をはあふせ古市てはたかに成た客も見へけり      梅文
しる人にあひの山なるお杉よりわるしと顔をふる抜参り      志賀
鶏の声をはかりておこせとも真寝入する関のはたこや       可石
いせ参りとまりはこちへおしやれめかお手をとつたりおあし取たり 斧光
三味線のてんつるてんの抜参手に手を引て行間の山        船盛
抜て出たいせの土産に十八の娘も買ふた鬼の大津絵        巻成
今朝通る櫛田の宿におしやれめの寝ミたれ髪をいさといてミん   藁人
年々にふえるたいたい講中ハなりも揃ふていせ参りせり      李石
道中はいとも陽気に大夫着き末社残らず宮めくりして       尚世
宮川ハ無事に渡れと思はすもはまつてぬれた古市の茶屋      狐原
三月の節季は留主に打まかせおはらひうけに行いせ参       篤甫
御?(後?)よりのむかひの駕に講々もまけすおとらす肩ならへ行 凹丸
いせ参と足もとみられふミこんて深江(?)の笠をかいかふりけり 橘丸
道中をしやへりつゝけし伊勢詣せめて一夜ハおしに泊らん     角丸

    〇
伊勢参り同じ衣裳の外にまたきも揃ひぬる旅の道連        鰒丸
我々の穢をこゝて流さんと人にあふせる宮川の水         浜住
恋ならて忍ひついせへ抜参人目の関て袖をひかれぬ        墨主
田楽のくしの外にも往来をさすにおはるゝ宮川のふね       竹臣
施をうけに入たるこゝちかも杓の底まてぬけ参して        春水
坊主をハいむはあたまてしれたこと髪長つれて行いせ参      ?成
ぬけ参り片手に杓を握り飯の礼をいふさへ口にはうはる      守一
参るとも寒いあついもなき頃のよい中にするいせの神垣      春風
神国といふもむへなりいせ参の馬も三宝荒神にして        長成
    〇
伊勢参よき日に立た女連日毎に馬にのりの来た旅         宝楽改帯丸
名にしおふ雨風の宮めくる日もいとゝ長閑に天照す神       町住改猿丸
事残し抜参りしたいひ訳のしるしか買ふて戻る大津絵       人一改一丸
春来れハ浜荻もけに角くミていせのいの字の芽くミ見せけり    釜守改釜丸
手拭や笠ハもとより音頭とる声もそろへにしたいせ参       晩来改竹丸
ぬけ参りかつた路銀をおはらひや万金丹ハ利息なるかも      亀里改紫竹丸
参宮の人も手拍子打揃ひまつ坂こえて見るいせ踊         米成改哥丸
    〇
はるかなる富士を一目や二見潟見るも朝日の御影成けり      朝丸
目印にミかさの山の外にまた人の山なるならのはたこや      潮丸
いつ見てもたなに奇麗なふち細工引はつて売るみな口上手     楠丸

春なれや山川万里へたつれといせ参宮の道遠からす       熊野 亀也
詣てぬる人のこゝろの?ほこり吹払ふらんいせの神風      仝 八重成
馬士うたの声はるの日の長旅もうさを忘るゝいせの道中     仝 留主人
末広の講を結んていせ参り神の恵ミを打あふきつゝ       仝 ?来成
先のとしわたらひなれと今こゝにおかむ宮居もあらき田にして  仝なます
坊さまと拝所はちかふ参詣の頭にかミのいたゝきし徳      仝 ?也
美濃近江寝物かたりのいせ参ひとつの宿に泊り念して      仝 哥女
音頭とる声高綱の上こして先をあらそふいせの宇治川      湯浅 石守
日の神の徳も深江の菅笠をミないたゝいて行いせ海道      仝 少融
鈴鹿山千の矢よりもいとしけくひきもきらさす行いせまうて   阿州 米丸
六軒のけんを質とし色ならてかへて行たる道中の駕       兵庫 糸丸
    ○
       壺中菴
二見なる女夫の/岩の其中に/はつ日産出す/今朝のしほ/時

    ○
丸いものたんとちらしてぬかつけと坊主あたまをいとふ広前   近丸
道中はすれとおしやれに目もやらすけふは大夫て一夜泊らん   遠丸
道の辺の桜ハ笑ふはなうたてこかねちらしつ行いせ参      賀茂丸
松坂ををこえぬ先から水口の踊子汁のかけんよいやさ(?)   和子丸
伊勢の宮へとくより心ぬけ参内外のものに咄さへせす      ?丸

語注・気付き

*壺中庵 日本の古本屋「鈴屋大人都日記」解説中に次の記事あり。
石塚竜麿編。弘化4年壺中庵魯翁手写の記あり。「壺中庵」印記。『国書人名辞典』 に「壺中庵梅干丸 江戸時代後期の人 狂歌作者 小山氏 号・魯 大阪船場久宝寺町に住す」とあり。この人の手写本か。
*この摺りものは壺中庵梅干丸社中の「伊勢詣で」を題とした狂歌摺りものと思われる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました