筑紫に、なにがしの押領使などいふものゝ有けるが土大根を万にいみじきくすりとて、朝ごとに
ふたつ~はかりててき
おそひ来りて~かへして
げりいとふしぎに~いか成ひとそ
とひけれは~けり
深く信を~けるにこそ
甲申の夏さ月に 六々園仁人需によ(り)て
東都無禄寿老人 源無量書 印
語注・気付き
*原文 筑紫に、なにがしの押領使などいふやうなる者のありけるが、土大根を万にいみじき薬とて、朝ごとに二つづゝ焼きて食ひける事、年久しくなりぬ。或時、館の内に人もなかりける隙をはかりて、敵襲ひ来りて、囲み攻めけるに、館の内に兵二人出で来て、命を惜しまず戦ひて、皆追ひ返してンげり。いと不思議に覚えて、「日比こゝにものし給ふとも見ぬ人々の、かく戦ひし給ふは、いかなる人ぞ」と問ひければ、「年来頼みて、朝な朝な召しつる土大根らに候う」と言ひて、失せにけり。深く信を致しぬれば、かゝる徳もありけるにこそ。(『徒然草』六十八段)
○本HP 20230909調査J38、20230909調査J44 にも源無量の書き物あり。
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