軸物書簡

遠藤宇治右衛門宛て本居三四衛門書簡

撮影:立石恵嗣 / 分類:20230723-J9

新禧御祝詞辱致拝見候
先貴家愈御揃御安福
御重齢奉賀候拙宅皆無
事致越年候御休意可被下候
右乍御?嘉儀申上候??
何位(?)候恐惶謹言
      本居三四衛門
   二月三日
   遠藤宇治右衛門様

去年九月廿六日御認之御状
長歌等御詠草一巻十月十五日
到来其後早速加筆もいたし候
将又前田世美へ御礼状とかや
被遣候夫々たしかに入手いたし候
て返事可申上と存候所年末ニも
なりいろいろまきれ候て大ニ延引相成候
先長歌感賞介石翁画をめて
給へる長歌早々右翁へ見せまほし
く社中若人へ頼清書うつさせ置候
しかるニ万葉詞ハ翁もとても解
かねられ可申自ら持行咄しかてら

よみきかせ可申なと存候て延引相成候
右介石老人去秋ころゟ大平一
両度面会咄し申事もありて右
のうはさハ致候へとも其節も右之
長歌ハ持行不申面談事格別之
要談故まきれ候てハ主一ニ談候事
軽ク相成候て(も?)いかゝと存候故也此度右
貴?詠草貴地へ相達し候ハゝ早々自
筆御清書被成候て介石先生へ御贈り
可被成候拙(方へ?)も古風歌六七首先年
御よみ被成候のをも取合せ御清書被下
御贈可被下候扨去年 方金百疋御贈
被下毎々忝奉謝候何かと申上候へ共
取込早略仕候○扇面染筆之事ハ
先ツ御断??先預置申候外ニ
短冊色紙類御こし被成候ハゝ認上
可申候○雅言集覧も五ノ上下迄求
申京虫林ゟかひ候て高直成ル物ニて
こまり候大分高ク覚候へとも早々ほしく
右之通ニ仕候六七八も早々ほしく
候御取寄あらハ拙へも求取?先
如此御座候以上
    二月三日
別書手紙ハ前田世美ノ妻くにと申人
之手紙也正巳ト云ハかの次令ヲ催(?)
候男也

語注・気付き

*前田世美 後出の野呂介石の門人。(和歌山県立博物館の企画展「江戸時代の紀州の画家たち」参照。
*介石翁 野呂介石 1747~1828 江戸時代後期に紀州で活躍した著名な文人。十四ごろからは京都へ出て絵を学ぶ。
○本書簡は同じ二月三日の日附ではあるがもともと別の書簡だったものを一つに貼り合わせたものと思われる。「新禧御祝詞辱致拝見候」で始まる書簡は春足さんからの新年の挨拶に対する返礼の挨拶。「去年九月」で始まる書簡には用件がこまごま書かれている。その要点は①去年九月二十六日付け春足書簡とともに長歌を含む和歌が送られてきた。長歌は(野呂介石の画を称える歌だったので)弟子に清書の上、写させた、野呂介石は万葉仮名を読むことが出来ないので、自分が出かけて行って内容を解説した。そのため返事が遅れた。②(春足さんから)扇面に染筆を頼まれたがお断りする。短冊・色紙類ならば引き受ける。(この読み取り間違いか?)③雅言集覧の五ノ上下を京都の虫林(本屋か?)から買ったがあまりにも高かったので閉口した。④六、七も早く読みたいので取り寄せがあるならば送ってほしい。

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